「知的財産」の上手な使い方

一応法学部出身なのに、この辺よく分からない。
IBMからオープンソースへ500件の特許の寄贈という出来事は「知的財産」の上手な使い方を教えてくれている。
「知的財産」は、『著作権なんて無視して「知的財産」は人類みんなで共有しようぜ、イエイ!』という方向(P2Pとか)と、『著作権守ってくれないと商売あがったりだから「知的財産」保護を死守!』という方向(ミッキーマウス裁判とか音楽業界とか)に2極化している模様。主観だけど世の中的・世論的には前者優位な気が。ぱっと見、前者のほうが気前いい感じで、後者はケチケチすんなよって感じだし。あくまで「ぱっと見」ですが「ぱっと見」でじゅうぶん。
そんな世の中的に、IBMは『「知的財産」の共有を推進するリーダー企業』という見え方になる。ナイスなブランディングです。逆にミッキーマウス著作権死守に燃えるディズニーのような企業は保守的な印象を持たれます。
見え方的な部分のみならず、IBMは『「知的財産」を共有すること』によって大きなメリットを得ている。もともとLinuxが進化したきた過程には、IBMやHPのようなハードウェアベンダーの人々の働きがでかいという歴史がある。これは別にIBMやHPにボランティア精神旺盛な人がいっぱいいたからというわけではなく、それら企業の戦略だったから。自分のとこだけで開発すると大変だからオープンソースを使って開発費を安くしましょうというわけ。で、企業としての付加価値は、ソフトウェアの機能そのものではなく、サポートやコンサルやソリューションに見出すという戦略。今回の出来事もその延長線上。『「知的財産を保護すること」イコール「競争力」ではない』ということです。

でも、同じ記事には、こんなことも。

米国特許庁における企業別年間特許取得件数でIBMは12年連続で首位を獲得し、2位に1314件の差をつけて3248件の特許を取得しているという。

IBMは『「知的財産」の共有を推進するリーダー企業』という見え方をしていながら、企業としての競争力を維持・向上させるために保護するところはしっかり保護している。賢いですね。

そしてもう一点、IBMは12年連続で首位。環境の変化に適応しながら、常に新しい「知的財産」を生み出しています。ディズニーのようにミッキーマウスだけで勝負しているわけではありません。ダーウィンも言っています。

優れたものが生き残るのでなく、変化するものが生き残る。

そんなわけで、「知的財産」の上手な使い方は、

  1. 企業戦略をもとに「保護すべき部分*1」と「公開すべき部分*2」とを見極める。
  2. 「公開すべき部分」を大々的に公開することにより、『「知的財産」の共有を推進するリーダー企業』というブランディングを行う。
  3. 「公開すべき部分」の大々的公開の裏に隠れて、「保護すべき部分」は、しっかり保護する。
  4. 環境の変化に適応し、常に新しい「知的財産」を生み出し続ける*3

*1:保護しないと競争力を失って爆死する部分

*2:公開しても競争力を失わない部分、または公開することによって競争力の向上に繋がる部分

*3:これができないと、そもそも1〜3はムリ…